No.5 対校戦から見えること
会員の皆さん、倶楽部がいつも大変お世話になっています。
4回目に続いて5回目の投稿です。
今年の3月に元幹事長の内藤藤三先輩がご逝去されました。内藤先輩は私よりは約7歳年上でしたが、長年にわたり倶楽部の発展に貢献され、まだまだご指導をいただきたかったこともあり、倶楽部にとっての大きな柱を失ったような気持ちです。
また私は同じ短距離仲間として直接ご指導をいただいたこともなつかしく、心より残念に思い、ご冥福をお祈りします。
今年のわがクラブは、4月8日の4大学戦に優勝し、5月の最終週末に行われた関東ICでは800m、走り幅跳び、やり投げの各種目で3人の入賞者を出し合計13点を獲得し、久しぶりに4日間の日程で毎日のようにわが校の学生が出場している活気のある大会でした。
関東IC(2部校の部)に参加した国公立大学の中ではわが校は総合では、群馬大、東大、横浜国立大に続いて4番目の得点でしたが、特筆すべきはフィールドで12点を獲得し、実にフィールド部門に限って言えば、国公立大の中では東大と肩を並べてトップの成績でした。このことは大いに誇っていいのではないでしょうか。
わがクラブの参加する対校戦としては高レベルの大会ですから、この活躍を来年以降も継続できるよう3年生以下の学生に一層の精進を期待したいものです。
またその力を潜在的に持っている学生はいると信じています。
その一方で数字とは面白いもので、6月17日に行われた東京地区国公立戦では、関東ICの1部に属する東京学芸大がトップの得点、また東大が上位で得点を重ねるのは理解できるとしても、関東ICでは無得点だった東京工大にもわがクラブは大きく引き離され、首都大学東京とも同程度の得点だったのではないでしょうか。
レベルの高い関東ICで名をはせたわがクラブが低いレベルの国公立戦で東工大等に後塵をあびるのは何か不思議な気がしますが、なぜそうなるかといえば、選手層の薄さ、厚さの違いです。
わがクラブには関東ICで入賞できるほどにレベルの突出した選手が特定の種目に各1人いる反面、国公立戦レベルの大会で幅広い種目で複数の選手が入賞できるほどの厚い選手層をもっていません。
よい例は、わがクラブは国公立戦では110Mハードル、棒高跳び、3段跳びに1人のエントリーもありませんでしたが、これらの種目は他の対校戦でも競技種目なので本来は選手を計画的に養成して経験を積ませるべき重要な種目で、エントリーが1人もなかったことは憂慮すべき事態で早急な解決策が必要です。
この説明を受けて、わがクラブには部員が少なく選手層が薄いので、エントリーできないのは仕方ないとの反論もあると思いますが、しかしそれは間違いです。
東工大は関東ICでは入賞できるほどの突出した力のある選手はいないものの、よりレベルの低い国公立対校戦では入賞できる力を持った選手がわがクラブよりは多く、しかもその層が厚いことから、すべてのトラック種目にわたってわがクラブより多くの出場者、入賞者を出し、得点数ではわが校を上回っています。詳細まではわかりませんが、東工大は国公立戦のトラックでは東大を圧倒し、東学大にも迫ったのではないでしょうか。
私は3年前から、東工大の活躍を見て将来はわがクラブより総合力で上回ると予想していましたが、ここ2年で記録面からも予想以上に強力な部に成長しました。
しかもこの傾向は当分の間は継続すると思われ、我々の学生時代は比較にならないくらい力量差があった東工大が今や総合力でわがクラブを凌駕するほどに伸びた理由、またそのマネージメントの過程を知り、参考にすべきと思っています。
わがクラブは東大の陸上部との比較で、部員数を比較してその違いから部員数を増やさないと全体の底上げが期待できないとの考えがあるようです。
確かにクラブ全体を長期的に高レベルで安定的に維持するためには部員数を増やすことは重要な要素であることは否定しません。
しかし、東工大は全体の学生数もわが校と大差なく、おそらく部員数もわがクラブと大差ないはずで、それに加えて東工大は自前のタータントラックも持たず、練習環境はわがクラブよりは恵まれていないはずです。
わがクラブはタータントラックの完成以来、多くの他校が合同練習の名のもとに
わがグランドを訪れています。それはよりよい練習環境を求めているからです。
合同練習は他校との交流を通じて、練習方法の情報を交換できるなど、わがクラブの質の向上に刺激を与える点で素晴らしいことだと思っています。
一方でわがクラブも他校に進出し、外からの助言を仰ぎ、高い技術やすぐれたマネージメントを積極的に取り入れることも重要なことだと思っています。
わがクラブに今一番欠けていることは、広いまた中長期的な視野でクラブの成長を図る発想力ではないでしょうか。
2017年6月27日 一橋陸上競技倶楽部 会長 浜 田 愃