「町弁雑感」・・・・・ 高井 信也(1995年入学)


高井さん
平成12年に卒業し、ようやく平成19年9月に弁護士登録してから、早5年半が経とうとしています。
弁護士として一回り大きくなったかどうかはともかく、体のサイズは確実に一回り大きくなりました…。
陸上競技部では短距離パートで専門は400mでした。卒業後は、細々とジョギングを続けフルマラソンにも何度か出ました。が、それも平成20年4月のかすみがうらマラソンが最後で、子供が生まれてからは全く運動しなくなったので、太るのは当然なのですが。

さて、この仕事をしていると、よく「何が専門なの?」と聞かれます。
私のようないわゆる「町弁(まちべん)」は、個人〜中小企業の事件を幅広く取り扱っており、専門分野に特化してその分野の事件しかしない訳ではありません。
そのため、質問には「なんでもやります」と答えていたのですが、どうも反応がよくありません。質問者は、弁護士が何をしてくれるのか分からないから聞いているのに、「なんでもやります」では答えになっていませんから、反応がよくないのは当然です。
そこで、最近は、「交通事故事件と労働事件が専門です。」と答えるようにしています。両事件を併せれば年間50件以上受任していますから、取扱いの多い事件であることは間違いありません。
とはいえ、それ以外にも、貸金・売掛金回収、不動産事件、破産事件等の民事事件や離婚・相続等の家事事件、裁判員裁判を含む刑事事件もやっています。

この業界ではまだまだ若輩者ですが、それでも、どうにか5年半続けてこられたのは、日々、世の中にはいろいろな人がいるなあという発見の連続だからかもしれません。社会学部のフィールドワークのような感覚といえば近いでしょうか。

例えば、民事事件なら、当事者の立場は「会社員」、「自営業者」、「会社の社長」と様々です。家事事件なら、「妻」、「夫」、「親」、「子」、「相続人」等でしょうか。
また、私が扱う交通事故事件の依頼者はほとんどが「被害者」です。他方、刑事事件では「加害者(犯罪者)」が依頼者です。貸金・売掛金回収事件なら相手方として「債務者」に会いますが、個人破産事件では依頼者として「債務者」に会います。事件によって逆の立場の方から依頼を受けることがあるのもこの仕事の特徴かもしれません。
そして、私の依頼者は、「日本人」ばかりでなく「外国人」の方もそれなりの数います。依頼者の年齢も様々です。
多種多様な人が事件ごとにそれぞれの「役割」を背負って対応しているのがまさに「社会」なのだなあと日々実感しています。出会ったことのない役割や性格の当事者に会うこと自体が興味深い(往々にして事件としては大変なことが多いですが)と思う感覚が自分にあるというのは、この仕事に付いて始めて自覚したことです。
弁護士は、当事者ではなく当事者の「代理人」として、いわば「他人事」に首を突っ込んで事件解決のお手伝いをしているだけですから、その意味では気楽なのかもしれませんが。

さて、陸上競技部出身で、現在、弁護士等の法曹として働いている方が、私が現役時代に共に練習した方だけでも6名おり、ときどきお会いして情報交換させて頂いています。原稿を書くにあたり「遠方の朋・近くの友」を読み返してみたところ、2004年入学の片桐久充さんも弁護士としてご活躍のようですし、陸上部出身の法曹関係者は意外に多いのかもしれません。
なにぶん狭い業界ですので、「陸上部法曹の会」とまではいかなくても、情報交換したり交流が持てれば良いなと思います。

以上、とりとめもなく失礼しました。昔を思い出しながら原稿を書いていると、久しぶりに国立グランドに行きたくなりますね。

(5月2日受信)