「陸上部経験を生かした大学教育」・・・
角田 保(カドダ タモツ・1987年入学)
一橋大学陸上競技部OB・OGの皆様,現役部員の皆様,こんにちは.H3(1991年)卒の角田保です.
大学卒業後もずっと東京にいるのですが,出不精なものでずいぶんとご無沙汰しております.
現在は大東文化大学経済学部で教員をしております.このエッセイは過去のことと本学の話が中心です.
特に現役部員には参考になるかと思います.
また陸上部つながりの余談ですが,本学は2013年の箱根駅伝に3年ぶりに出場します.注目いただければ幸いです.
・陸上部時代の思い出・・・コンセプトが大事
一番印象に残っているのは,4年次(1990年)の春の四大学戦です.前年までの三大学戦(学習院・東京外大)と,
対成蹊戦を合併して初めて行ったのがこの大会でした.前年に2〜3回ほど各校の主務の方に国立の2階建ての部室にお越しいただいて,
合併の打ち合わせをしたことをよく覚えています.本当にスムーズに話が進んだのですが,
その一つの理由が「この大会で関東インカレ標準記録を切ろう」というコンセプトだったと思います.
優勝を目指すのもいいのですが,標準記録を切っていない学生に目標を与えようというものでした.
4×200mリレーをやめたり,オープン競技を増やしたのもこのためです.20年以上経った今では
どのような位置づけになっているのでしょうか? またこのときは主催が一橋大学であるにもかかわらず,
成蹊大学の主務さんに場所取りを引き受けていただいて,新装間もない武蔵野陸上競技場で開催できました.
今は知りませんが,当時は武蔵野市内団体優先ルールがあったので,本当に助かった記憶があります.
前年秋の東大戦・名大戦,それからこの四大戦の後の,国公立大学戦と三商大戦と全て主催でした.
これらの対抗戦の運営では私自身いくつかミスをしたので,百点満点とはいえませんでした.しかし,
四大戦は私としては本当に満点をつけられるものでした.
もちろん先輩・同輩・後輩については,
全ての大会とも本当にきちんとやってくれたことは,感謝とともにここに記しておきます.
また主催校として,1年間でこの5大会全てに,高橋経済学部教授(当時の陸上部長)に開会の挨拶をしていただきました.
毎回「〜という大会があります.よろしくお願いします.」とお願いするだけで,にこやかに引き受けていただいたことを思い出します.
そして,それぞれの大会に応じた内容でスピーチをいただきました.当時は「部長だから当然」と思って
何とも思っていませんでしたが,大人になってまた同業者となった今では,大変にありがたいことをしていただいたのだと,
感謝の思いでいっぱいです.
運営以外で最も印象に残っているのは,1年次の夏に菅平高原で自主的に合宿したことです.
この25年前の写真は急斜面を苦労して登山した時のものです.
左から,私・H先輩(当時社会人1年目)・M先輩(当時4年生),撮影はY先輩(当時3年生)です.
学年を超えて硬軟両方の話をしたり,たくさんの料理や新鮮な野菜を食べたりと,
とてもよい経験をさせていただきました.
また宿泊先のマスターもとてもよい方だったことも含めて,もう,
いくら出してもこのときの感動は味わえません.
感受性の高い若いうちに少人数で何かをするということは,本当に価値あることだと思います.
1990年代・・・修行時代
陸上部内外の色々な方に本当にご迷惑をかけながら91年に卒業し,
その後93年に法政大学大学院に入学しました.
2000年まではある種の修行時代でしたから,特に95年に博士課程に入ったあとは,
自身の結婚・子供の誕生などの自分の家族以外の記憶が薄いです.
それでも,同学年や近い学年の先輩・後輩の結婚式や2次会が多くあって
楽しく歓談したことは,覚えています.
大東文化大学経済学部での様子(1) 講義・・・「教育の大東」がコンセプト
2000年4月からこちらに所属しています.
本校は「教育の大東」ということで教育にはかなり力を入れています.
経済学部全体でみても,ゼミ加入率が8割を超えていますから,
私立の経済学部の割にはかなりお得な学部かと思います.
実際非常勤の先生方(複数)から「いやー大東の経済をなめてました.こんなにできるとは思いませんでした.
○○大学よりもずっとよくできますね」などと言われます.
総合すると大東亜帝国と一緒にされて呼ばれているレベルからは,突き抜けているそうです.
日東駒専(日大・東洋・駒沢・専修)と同等かそれより上だそうです.
私には本当かどうかはわかりませんが,そのくらいなら別に驚きではありません.
大学ではPCを使った統計的分析を中心に教えています.週当たり90分×6コマがノルマとなっていまして,
私の場合,ゼミ3コマ+講義3コマです.が,一橋での経験から,2年ゼミと3年ゼミそれぞれさらに1コマずつ延長しています.
やはり90分だけでは,あまり身につかないですから.そういうわけで,8コマ+予習+宿題作成+宿題採点と,なかなかハードです.
講義にしてもゼミにしても,「90分に1回は感動させたい」という思いでやっています.
感動が行動を変えるというのは,
1989年の関東インカレ2部で4×400mリレーで優勝したシーンを覚えている方々は分かるかと思います.
90分間ずっと無味乾燥になりそうなときは,華麗なるエクセルテクニック(笑)やプログラミングで魅せるようにしています.
宿題は学生1人1人にデータを変えて出題するので,カンニングができません.
他人を騙しても自分自身は騙せないということは,やはり陸上競技から学んだことです.
それを学生に態度で示しています.
教育効果は高く,
真面目な学生は高く評価してくれるので,苦労しながらもなんとかこの形式を続けています.
大東文化大学経済学部での様子(2) ゼミ・・・「太く聡明に」がコンセプト
・2年次: テクスト(文章)と格闘する・・・言われたことをきっちり理解し,できるように.
・3年次: 言われないこともできるように・・・問題自体を自分で発見し,解決できることを目指す.
・4年次: 問題を発見した後,他人が何をやったか調べ,その上で何か言えるように.
をゼミでの目標にして,すこしずつ力がつくようにしています.
2年ゼミでは線形代数を浅く(写真),微分積分を深くやっています.
後者は実数の連続性やε−δ論法を使った収束の議論からやっていますから,
このあたりなら平均的な一橋の経済学部生とそう変わらないと思います.
3年になると学問的なことと基礎教育の両方をやっています.前者は,
計量経済学(洋書)や数理統計学(和書)の問題を解いたり,実際のデータから計量分析をしたりなどです.
後者は,新書その他を読ませて毎週1〜2千字書かせて添削して返したり(前期),学生懸賞論文(後期)や
ゼミ成果発表会(後期)の指導をしたりします.4年ゼミはそれらを生かして卒業論文を書くという形です.
ゼミ生は結構大変ですが「太く聡明に」をモットーにして頑張っています.今の学生は怒られることに慣れていませんから,
私に怒られても折れない「太い」精神を持つことが,学ぶこと同様に大事だと思っています.
あと結構な頻度で3年生を飲みにも連れて行きます.怒られることに慣れておくこと・オンとオフの
切り替え・飲食しながらいろいろなことを語りあう・学年を超えて付き合う,などは陸上部での経験が生きています.
彼ら・彼女らにとってもきっと就職後に役立つと思います.
ところで,この「太く聡明」は覚えやすいなと思っていたところ,富国強兵と音がそっくりなことに最近気がつきました(笑).
確かに,普通の学生に数理系の科目の教育を施して,
学業面でも精神面でもストレス耐性の高い「つわもの」を育てて卒業させていますから,
彼ら彼女らが国を富ませれば,富国強兵もあながち的外れでないかもしれません.
終わりに
皆さんの想像するよりもずっと優秀な学生たちに囲まれつつ,
(不真面目ながらも)陸上で学んだ経験を生かしながら,日々幸せに過ごしております.
このように教育中心なので,研究については,合間や夜にしている感じです.
分野を変えたばかりでこちらの方は遅々として進みませんが,
講義同様になんとか他人を感動させるものを作りたいなと思っています.
長々とおつきあいいただきありがとうございました.今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします.
・メールアドレスは,HP http://www.ic.daito.ac.jp/~tkadoda/ にあります.
・Excelを使う人は,http://www.ic.daito.ac.jp/~tkadoda/winkey/winkey_top.htm
を見てみてください.概ねExcel2010でも使えます.
(12月8日受信)
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