遠方の朋・近くの友

「雑 感」・・・・・ 金谷 浩介(昭和36年卒/1957年入学)


今年6月に75歳を迎えたのを機に、これまでの半生と最近の思いを書いてみました。
昭和36年に卒業、当時の日本におけるベンンチヤー的分野の一つである石油化学会社に入社。 時代はまさに欧米に追いつけ、追い越せを旗印に、オリンピック開催、高速道路 新幹線鉄道の建設、万博の開催と高度経済成長を遂げていった。国内需要の急膨張、世界 高度経済成長 各国への輸出の急拡大を背景にあらゆる分野で、需要は後からいくらでもついてくると 供給設備の増強競争が始まった。この時代、我々も猛烈な勢いで働き、誰もが日本の一人者たらんと 自由に動きまわり、多少の見込み違い、失敗があっても成長の波の中に飲み込まれて発展してきた。

 当然、世界との交流(人、物、金、文化等)も急拡大。グロ−バル市場での競争も激しくなり、 多くの世界企業の日本進出、逆に日本企業の海外進出(合弁、買収、新会社設立 等)が当たり前となり、GNPは米国に次ぐ世界第2位の経済国家になったのはそう昔ではない。 (現在は、中国がわが国より早いピッチで同じ道を駆け上がり、世界2位の経済大国 になってしまったが、挫折のスピ−ドも速いであろう。)

 グロ−バルな競争の中で、私の会社生活の後半では、いくつかの海外企業を設立したり、 グロ−バルな海外企業を経営する貴重な体験をしました。その中で得た一番大きなことは 当たり前のことですが、世界には、多種多様な文化、歴史、宗教を持った人々が生活しており、 その国々でその人達と一緒に生活し、仕事をするんだと言う基本認識です。時として、 先進国としての驕りからか、自分達の文化を押し付けようとして失敗しているケ−スをよく見ます。 真に発展しているグロ−バル企業は、この世界の多様性を認識しその中で対話を通じ その企業独自の文化を確立しているところが成功しています。 現在大きな問題となっている中国を初めとする近隣諸国との領土問題も、世界には多様な文化、 歴史、ものの考え方を持った人々がいるというグロ−バルな視点を欠いては解決は容易ではありません。 夫々の国の歴史を、今日までのグロ−バルな研究成果も、盛り込み相互に又は共同で研究し、 その成果を内外に発信してゆく粘り強い対話が必要だと思います。 世界の、自国の歴史を知ることは、グロ−バルなマインドには欠かすことが出来ない 多文化共生 要素であり、歴史の、特に近代史の教育は国の将来のためにもきわめて重要な項目です。

 欧米に追いつけ、追い越せを目標に高度経済成長を続け経済大国になったが、成長の バブルが発生、やがて破裂。新しい目標をみいだせない、しかし昔の成長を忘れきれない 日本は失われた10年に苦しんだ。かっての成長を支えてきたこの国のあらゆる制度、 仕組みに綻びや矛盾が次々に現れ(政治が一番ひどい)、これからの成熟社会への発展の足枷となり、 社会の閉塞感を助長しております。

 今日、わが国では、全国どこで生活しようが、人々はグロ−バルな事象とつながっており、意識する、 しないに拘わらずその影響を受けております。このような国は世界でも数少ないと思います。 正にグロ−バルな海の中に浮かぶしたたかな国を目指さなければならないと思います。 それは人口減が明らかな中、これまでの重装備に支えられたハ−ドパワ−の国でなく、 ソフトパワ−に支えられた成熟した国創りだと思います。

 我々世代がなしえなかった新しい国創りへの転換を若い次世代の人達の力に期待いたします。
                                                            (了)

(10月11日受信)