遠方の朋・近くの友. 写真をクリックすると、拡大します。名前をクリックすればメールを送れます。

「箱根」の功罪・・・・・ 岩瀬 浩一(1966年入学)

箱根駅伝  箱根駅伝が正月のTVの人気番組として30%前後の視聴率をたたき出すようになって 久しく、数ある陸上競技のイベントの中で一番人気があることは疑う余地の無いところであろう。

今年は早稲田、東洋、駒沢の3強と言われていたが、優勝争いの観点から言うと東洋が5区の柏原にトップでたすきを渡した時点で勝負は決まり、あとは東洋の強さだけが 際立つ結果となった。

その他の順位争いでは明治、青学、城西の躍進など見所は多々あったが、10000mや20kmの平均タイムではトップクラスで3強に次ぐと見られていた学連選抜がブービー争いに終わったのは、寄せ集め集団の悲しさとは言え大変残念なことであった。

メンバーを見るとスター軍団の早稲田に対し、東洋は柏原以外にはスターらしい選手は 見当たらないにもかかわらず、やっとメンバーに滑り込んだ選手が区間賞を取ったり 2年生の設楽兄弟が想定をはるかに超えるほど強くなっていて、「20kmランナー」の  育成力には目を見張るものがある。

関東学連のローカルイベントにすぎない「箱根」であるが、これほどの注目を集める  ことで長距離の底辺拡大に貢献していることは間違いない。しかし、一方では弊害も いろいろ指摘されている。

全国の有力高校生ランナーが「箱根」で走る事を目指して関東の大学に集中し過ぎる  (昔は福岡大重松森男や中京大中尾隆行など世界的なランナーが地方大学から出た)、 中距離ランナーが箱根要員にされるため育たなくなった、アスファルトの上で過度な 練習を積むため故障が多く選手生命を絶たれるものも少なくないなどの点もあるが、 一番の問題は将来トップランナーとして世界を目指して欲しい選手が「箱根」で必要以上に注目され、スターになったために達成感を感じたり燃え尽きたりしてなかなか大成できない事にある。

箱根駅伝  ちなみに箱根で活躍して世界的なランナーに成長したのは瀬古利彦と谷口浩美だけで、 前述の重松、中尾の他中山竹通、宗兄弟、伊藤国光、森下広一、高岡寿成、油谷繁など世界で活躍したマラソンランナーは箱根には無縁であり、尾方剛は箱根で挫折した後実業団で這い上がってきた選手である。

箱根の大スターとなり「山の神」と言われる柏原は今後マラソンに注力し、瀬古を越えるランナーになりたいと言う。 彼にはぜひとも箱根の名ランナーは大成できないと言う「ジンクス」を破って世界的なマラソンランナーに育ち、箱根で培った「成果」を存分に発揮して欲しいものである。

(1月5日 受信)